05871-200502 オンライン授業の成績評価方法
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4月17日からオンライン授業で開講されている成蹊大学。当初の授業予定から1週間遅れての開講です。100分×14週+試験週の構成で予定されていた学年暦から試験週を削減することによって1週分を確保し、授業は予定通り14週実施。学則上、期末試験は対面で実施することが必要ですので、今期は成蹊大学のすべてのクラスで期末試験を不実施、平常点での成績評価、という方針が決まりました。 100名以上のクラスを担当する全教員にZoomのProアカウントが配布され、shio.iconも初回からすべてZoomで行っています。元々、法学部の法律科目は期末試験を実施する前提で成績評価を予定していますから、平常点のみでの成績評価に移行するためには相応の対応が必要です。 https://flic.kr/p/2j8JjbN https://live.staticflickr.com/65535/49970585722_cc67a96af6_6k.jpg
2020年度前期にshio.iconが担当している授業は以下の通り。
月曜
1・2限:大学院博士課程のゼミ(履修者1名)
3限:1年生のゼミ(17名)
4限:「民法1」の授業(1年生対象・118名)
木曜
1・2限:「民法2」の授業(2年生対象・205名)
金曜
4限:shioゼミ(2・3・4年生対象の民法、著作権法判例研究ゼミ・13名) 5限:ドラゼミ(2・3・4年生対象の司法試験論述式試験過去問(民法)を使って論述力を磨くゼミ・13名) (この他、水曜1・2限に政策研究大学院の「民法」(10名)も4月8日からZoomで行っています。また5月22日から5週間、週2コマ、信州大学の「著作権法入門」もZoomで担当することになりました。)
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このうちゼミは対面の時とほとんど変わっていません。shio.iconがコミットするのは最小限で、ゼミ長を中心として学生主体で議論が進んでいきます。ブレイクアウトルームの分配なども含めてホスト権限をゼミ長に渡してあります。
以下、大人数クラスの授業について書きましょう。
授業の方法は基本的に対面のときと同じ。shio.iconと学生たちとの対話、及びiPad Proによる板書(アプリはGoodNotes 5)で進行します。PowerPointなどの「スライド」や予め紙で配布する「レジュメ」は普段同様、一切使用しておりません。事前に用意した情報は下記のScrapboxで履修者に共有しています。その内容は、前の週に学生から受け取った質問、意見、感想とそれに対するshio.iconからのコメントがほとんどで、その後に、その日の授業で扱う予定のトピックのみ掲載しています。 さて平常点のみによる成績評価をどうするか。
普段、shio.iconの対面授業では発言回数を1回1点とし、その合計が平常点です。学生が挙手し、shio.iconから指名され、口頭で発言した場合に、内容を問わず1回1点とカウントします。間違った発言が出ることによって「それは違うのか」と他の学生たちが理解できますし、そもそも多様な価値観を尊ぶのが法律学の存在意義ですから、発言内容に優劣はなく、すべて同等の価値があるからです。学生たちは先を争って教主、発言しますので、多い学生は半期15回でトータル100回以上発言します。 毎回、学生たちが授業終了時に提出するReaction Paperに、
(その日の発言回数)+(前回までの合計発言回数)=(その日までのトータル発言回数)
という式を記載します。それによって学生たちは自分が現時点で平常点を何点得ているかを常に把握できます。shio.iconも全員の得点を容易に把握できます。最終回に提出されるReaction Paperには今期のトータル発言回数が記されることになりますから、平常点の算出も簡単。この方式を他の教員に紹介すると虚偽申告を懸念する声が聞かれますが、民法の授業であり、民法1条2項に「権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。」とありますから、相手の信頼を裏切らないのが法律学を研究する学生の基本。それを学生たちに伝えて、shio.iconは学生たちを信頼しています。
毎回提出されるReaction Paperは、shio.iconが万年筆でコメントを書き、すべてスキャンしてPDFで保存したうえ、次週の冒頭で返却します。また質問や意見などはスキャンしたPDFから切り出して、上記の授業用Scrapbox(/shiolectures)に貼り、次週に紹介しながらshio.iconが解説、回答、あるいは全員で検討する素材として利用します。学生たちにはこのような形で公開することを事前に複数回にわたって周知しており、もし公開を望まない場合(個人的な相談など)はその旨付記してもらっています。 https://flic.kr/p/2j8Ej4s https://live.staticflickr.com/65535/49969804848_52afedc99c_6k.jpg
そのような方法で平常点をカウントしてきた対面授業からオンライン授業に移行した今期、学生の発言カウント方法に変更を加えました。対面授業では口頭での発言が1コマで数十件ありましたので、当初、Zoomで同じことを実施するため「手を挙げる」ボタンを利用し、早く挙手した者順に(リストの上から)指名して発言してもらったところ、通信状態が不十分な学生が「手を挙げる」ボタンを押してもサーバに反映されるのに時間がかかるため、いつもリストの下の方になってしまって発言する機会を逸する状況が生じていることが判明しました。それはフェアではない。学生たちの通信環境に依存しない方法で評価すべきです。
そこでチャットによる文字発言も発言回数1回とカウントすることにしました。4月30日に実施した第2回の「民法2」からそのルールを採用したところ、1・2限の2コマ連続授業で総発言回数が1,246回。一人平均6回ほど発言した計算です(最多で11回発言した学生がいます)。依然として口頭でも活発に発言されているのに加えて、ほとんど全員がshio.iconの問いかけに対して何らかの発言(チャットの書き込み)をしているという状況が生まれました。いつも学生たちの発言によって賑やかな対面授業よりもはるかに「賑やか」な授業がオンラインで実現したのです。これは素晴らしい。
学生たちからのメッセージによると、授業中にshio.iconが問いかける機会が多いため、学生たちは発言のチャンスを虎視淡々と狙っており、授業への高い集中度が終始維持されているそうです。授業をしているshio.iconからも、その様子が感じ取れます。学生側のカメラはoffにしている者が多いのですが、Zoomの1画面で表示可能な25名程度は表示してくれているので、shio.iconが反応を感じ取るのにちょうどいい塩梅です。
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発言回数を申告してもらっていたReaction Paperもオンライン化しています。成蹊大学で利用している「CoursePower」というLMSの「レポート」機能と「アンケート」機能です。 「レポート」には「1. 本日の教科書」、「2. 本日のQuestion」を記述してもらいます。
本日の教科書:その日に学んだ内容を、学生たちの後輩である高校2年生に教える教科書を執筆するものです。
本日のQuestion:その日の最後(または授業中)にshio.iconから出される「Question」に対する自己の見解を論述するものです。
「アンケート」には、「1. 本日の発言回数」、「2. shioへのメッセージ」を記述してもらいます。
本日の発言回数:その日の授業中に口頭またはチャットで発言した回数
shioへのメッセージ:質問、意見、感想など何でもOK
提出期限は授業日の23:59。これにより、発言回数を収集でき、CSV形式でダウンロードできます。それを14回分、Numbersで合計すれば平常点を算出できます。このほかに小テストを実施して加算し、成績評価する予定です。
対面授業が可能になっても、この方式を続けたい。Reaction Paperは紙を紙をCourse Powerで。発言回数の集計も簡単。
特に発言は口頭の発言だけでなく文字での発言を対面授業でもありにして、カウントしたい。そのためにどのツールを使うか。Twitterでもいいけれど、学生たちが本名を登録できる媒体がいい。Facebookは学生たちが使っていない。何がいいかしら。簡単なのはChatWorkかな。 そして期末試験に代えて、小テストをしようと思いますが、「テスト」の公正性は保たれない。いわゆるカンニングや学生同士の相談も可能。そこで、「レポートテスト」と称して授業中に出題し、同じく当日の23:59を期限として上記LMSの「レポート」機能で答案を提出してもらう方法で複数回、実施することにしています。
成績評価は発言回数とレポート試験の両者で算出する予定です。4月の授業開始時にその旨、学生たちに伝えてあります。
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